八ヶ岳自然散策

ウルップソウ

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このウルップソウは七月中旬、標高二八〇〇㍍の八ヶ岳石尊峰に咲いていた。この花を見かけるのは、強い風の吹きつける風衝地でしかも礫地が多い。しかしこの時は草原に他の花と共に咲いていた。

八ヶ岳稜線を彩る高山植物たちは住みやすそうな草原でなく、生育上極限と思える地を選ぶように見える。ウルップソウはどちらにも生息できるようになったのだろうか。

花の名前からは一見外来種を思わせるが、得撫草(うるっぷそう)の和名で、千島列島に並ぶ島からの名である。

氷河期に北極周辺から南下してきた高山植物で、ここまで辿ってきた道のりを推定できそうだ。日本での生息地は北海道礼文島と白馬岳周辺 および八ヶ岳に限られる。 (文・写真 青木興家)