八ヶ岳自然散策

樹液に集まる昆虫たち

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少年時代、樹液の出ているクヌギやコナラを目当てに、朝早くから雑木林に分け入ってカブトやクワガタを採集した思い出がある。

昨今、この八ヶ岳南麓一帯でも、オスのカブトの小型化やクワガタの減少を感じていた。主に集積された腐葉土に産卵、孵化(ふか)までを過ごすカブトに比べ、朽木でその過程を経るクワガタは、里山の雑木林の荒廃や太陽光発電パネル建設による樹木の伐採の影響を、より大きく受けていると思われる。

身近の雑木林では、人の手により伐採が繰り返され、生育してきた台場クヌギ(別称お化けクヌギ)をめっきり見かけなくなっている。

そんな中、久しぶりに樹液滴る大木に群がるノコギリクワガタや黒カナブンなどの甲虫類が観察できた。その大木は、クヌギ、コナラ、ヤナギでもなく、何とあの昔懐かしい歌謡曲、高校三年生の歌詞にも出てくるニレの大木であった。

しばし郷愁を覚えたひと時であった。

(文・写真 広瀬進)