できごと

第2回八ヶ岳高原文学賞 発表

webtoday

第2回八ヶ岳高原文学賞の発表

 令和6年度「八ヶ岳高原文学賞」には、東京や埼玉、静岡県などから12作品の応募がありました。心より感謝申し上げます。

 ご応募いただました作品を、事務局サイドで全て読まさせていただき、その中から入賞作品として故金田一春彦氏の長女・田中美奈子氏と山梨文芸協会前会長で、自ら執筆活動を続けている鬼丸智彦氏に審査員をお願いして講評をいただき、その結果を踏まえて大賞などを設定しております。

 今回、ご応募いただきました作品を慎重審議いたした結果、大賞は見送ることになり、佳作作品を2作品、特別賞2作品の計4作品とすることと致しました。合わせて2024八ヶ岳高原文学賞受賞作品集として、POD出版することと致しましたのでお知らせいたします。

佳作(北杜市長賞) 「清里ノスタルジア」 真夜 寛

佳作(韮崎市長賞) 「還暦オヤジは白地図の前に立つ」 高田博嗣

特別賞       「I Wonder(Departure)」 落合アキユキ

特別賞       「追憶」 丹澤みき

                           ※敬称略

ご入賞された皆様には、賞状、副賞をただ今準備しており、まとまり次第発送させていただきます。

また、ご応募頂きました皆様にも、北杜らしい記念品を検討しております。楽しみにお待ちください。

第2回 八ケ岳高原文学賞 受賞作品集

◆審査員の講評(佳作2作品のみ)

▼田中美奈子氏

清里ノスタルジア

最後まで読んで、あ、これは高校生の女性同士のラブストーリーなんだ、ということが初めて分かった。そのお膳立てとして30年くらい前の時代の雰囲気がそのまま残っている清里が舞台になっている。そこでタイムスリップして、ジュウニンという異世界で暮らしている人たちや、母親の死んだ恋人に会ったりして、お互いの気持ちが離れそうになりながら、最後は一緒に生きていこう、と確認しあう。

この主人公の名前が男の子のようにも見えるので、最後まで誤解しながら読まされるところが最大のドンデン返し。清里の町でタイムスリップするという設定はちょっとありきたりだし、母親からスマホで写真が送られてくる、というくだりで、昔ここで母親に何かあったのだな、というのはちょっとネタバレかも。

ほとんどセリフで文章がつながれていくので、読みにくさはないのですが、この半分の長さでも十分お話は出来そうな気がする。

還暦オヤジは白地図の前に立つ

主人公は会社を定年で辞めた後、それまで決められた路線バスに乗ったまま生きてきたので、突然突き放され、自分はこれからなにをして生きていけばいいのか、目標を失う。

それでも好きだった登山にまた挑戦すべく、昔の山仲間が集まって八ヶ岳登山をめざす。簡単なルートのはずがちょっと悪天候に見舞われただけで思いがけなく遭難しそうになり、自分たちはもう決められたルートしか行けないのだろうか、もう自分たちの前に白地図はないのだろうか、ルートなんて決まってなくて、恐る恐る踏み出して手書きで書きこんでいく。

そんなわくわくするような気持はどこに行ってしまったのだろう、と仲間たちと嘆きあう。しかし仲間の一人がガンに侵されたのを機に、絵画教室で知り合った女性とともに編笠山に登り、彼女の壮絶な人生を聞かされたり、樹木が再生するために生まれる「縞枯れ」を見たりして、まだまだこれからやることがいっぱいある、ということに気が付く。

「まだ見たことがない景色を探しに行こう、自分の白地図に初めの一歩を書き込もう」と決意する。

定年後の生き方を見つける、という単純なテーマに正面から取り組んでわかりやすい。文体も簡潔で、無理に気取っていないところがいい。「祭りの最中に突然自分だけ外に放り出されたような気分」といった例えもよく共感出来る。作者自身の体験を描いていると思われるが、自分を客観的に眺めていて、自己陶酔していない点が評価できる。

▼鬼丸智彦氏

清里ノスタルジア

三十年以上前の清里にタイムスリップした幻想的な物語。往時、清里は現在の原宿のように賑わっていたが現在は建物が残るだけ。スマホのないフィルムカメラの時代を二人の少女が行動する。赤岳や、ヤマネ、清泉寮、ソフトクリーム等を書き加えている。廃れ、忘れられた清里を復興させる多様性のある小説として評価する。

還暦オヤジは白地図の前に立つ

福岡出身の僕と三人の同級生は赤岳を目指すが一度失敗。大学教授の黒崎が大腸がんになり、上司に裏切られた女性浪瀬が登場し、編笠山に登る。これらのことはインパクトはあるが、付け足しの感じがする。主人公の心境が表現足らずの感じがする。

Xからの読者コメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
Facebookでのコメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
スポンサーリンク
Journal
Journal
株式会社ピー・エス・ワイが発行する北杜市と韮崎市を対象にした地域新聞八ヶ岳ジャーナルと韮崎ジャーナルです。地域新聞以外には、オンデマント印刷をはじめ、デザイン制作、プロッター出力、カッティングシートなど、様々な要望に対応しております。
記事URLをコピーしました