「久保田博二アジアの肖像」写真展開催
「マグナム・フォト」に所属する唯一の日本人写真家の久保田博二さん(69)は、「ダイトランスファー」と呼ばれる手刷りのカラープリント技術の魅力に魅かれ、約十五年間の間に五十八作品をダイトランスファーで制作。今回、高根町清里の清里フォトアートミュージアム(細江英公館長)で、その中から四十八作品を含む写真展が開かれている。十月二十五日まで開催。
七月四日から始まった「久保田博二 アジアの肖像ダイトランスファー・コレクション」の写真展は、ダイトランスファーの特殊プリント技術による作品と「食」の問題を取り上げた作品の二部構成になっている。
また、久保田氏の撮影フィルムをベタ焼き(密着焼き)にした印画紙を展示。どんな写真が作品に選ばれているのか、撮影スタイルや構図など、久保田氏の写真に対する技を余すところなく紹介している。
ダイトランスファーは、通常のプリントとは異なり、六〜九枚の版を手刷りで重ね、特色を駆使することで、一般的なカラー技法では真似ることの出来ない深い色調を表現することが出来るという技術。しかし、デジタル写真の普及と制作に必要な材料の生産が終了していることなどが重なり、この技法は絶えようとしているといわれている。
ダイトランスファーについて久保田氏は「まるで浮世絵の世界のよう。版画の方が肉筆より美しくみえるのと似ている。彫り師と摺り師を兼ねているよう」と評する。
一方、二部でテーマにしている「食」について、「今世紀一番の問題は食糧問題になる」と久保田氏は引き締め、「環境問題は、イコール食糧問題になるでしょう」、「食糧不足で二万〜三万人が亡くなっているが、日常的なものだから記事にもならない」と、自らファインダーを通して見てきた世界を語る。
今回展示している三十五点の作品には、説明文が掲載されており、「二十一世紀は食糧が一番の問題になる。そうなってもらいたくないというのを文章で書きました」と語った。
このほか、同ミュージアムでは、七月十二日に「久野公啓の『田んぼで出会う花・虫・鳥』」と題した講演と、七月二十五日〜九月二十七日まで「清里現代彫刻展 feel−空間と心をつなぐかたち」、八月一日には「ピンホールカメラ・ワークショップ」を予定している。
問い合わせは電話48-5599まで。