三月に入ると八ヶ岳の天候も安定し雪も締まるのでスノーシューの行動範囲も広がり、硫黄岳の爆裂火口の湯川に湧く日本最高所（標高二一五〇㍍）露天風呂である秘湯「本沢温泉雲上の湯」を楽しむことが出来る。
天気の良い日に約三時間の雪道を歩いてやっと本沢温泉に辿り着く、露天風呂はそこからさらに十分ほど登り最後に湯川の雪面に付けられた踏み跡をスノーシューとストックで降りた所にある。
斜面にへばりつくように作られた湯船は五～六人で一杯になる大きさで脱衣所も無いので湯船の側で脱いで熱い湯に飛び込む。
ほっと一息ついて頭を上げると荒々しい爆裂火口と真っ青な空が眼に飛び込んでくる。
三時間の雪道を歩いてきたものだけが味わうことの出来る至福の瞬間だ。
（写真・文 重田友五郎）
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