アナグマ
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雪解けの進む渓谷を歩くと、けたたましいミソサザイの囀(さえず)り声が聞こえてくる。枯木や岩の上などの目立つ場所で尾羽をピンと立て、大きく口を開けて囀っている。
桜の開花より早く、ウグイスより早く、渓谷の春の訪れを知らせてくれる。スズメよりもひとまわり小さく、日本の野鳥の中では最小クラスであるが、囀り声は大型の野鳥にも負けないほど大きい。
息が続くのが不思議なくらい長く、そして力強く囀るのだ。囀り声が聞こえるようになると、まもなく巣づくりが始まる。オスが岩や倒木に生えた苔を剥ぎ取って、口にくわえて運ぶ姿が見られるようになる。
巣が完成するころには、巣の近くで翼を大きく広げながら囀るディスプレイを見せてくれることもある。地味な色彩だが、ユニークで見ていて楽しい野鳥である。
(文・写真 今井義幸)