雪の棒道に座す観音像

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小荒間には戦国時代の戦場跡を記す石碑がある。そして、そのあたりから八ヶ岳山麓に沿って西へ「信玄の棒道」と呼ばれる軍用道路が走っており、往時は人馬がここを通って北信濃経略に向かったことだろう。今ではいいハイキングコースになっている。

この棒道沿いに西国や坂東三十三ケ所霊場を模して観音菩薩の石像が、一丁おきに小淵沢ゴルフ場近くまで置かれている。道中の安全を祈願するほどに人の往来があったわけではない。ただ、黒船到来など世情が騒がしくなった江戸末期の設置なので、三十三身を示現(じげん)する観音様の、衆生を救う慈悲を施主は願ったのであろうか。

まとまった雪が降った朝、雪中の観音像を撮りに行った。周辺には誰もいない、トレッカーが通る前のバージンスノー。静謐(せいひつ)という言葉がぴったりの一隅で、観音像に語りかける気持ちで、しばし豊かな時を過ごした。

(文・写真 高木宥)

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