くらし

北杜市在住の夢見里さんが作家デビュー「死者殺しのメメント・モリア」

北杜市在住の夢見里龍(ゆめみしりゅう)さん(28)が、KADOKAWA主催の「第26回電撃小説大賞」で最終候補作に選ばれた作品を改稿したファンタジー長編小説「死者殺しのメメント・モリア」(メディアワークス文庫)で、念願の作家デビューを果たした。「長年の夢が叶い、感無量です」と喜びを噛み締めている。

「幼い頃から病弱で、広い世界に連れ出してくれる本にいつも夢中だった」と話す夢見里さんが小説家を目指し始めたのは、中学生のとき。「自分も誰かの心に寄り添える小説を書きたい」と、小説コンテストに応募し続けてきた。

10回目の挑戦となった2019年の電撃小説大賞で、応募総数4607作品の中から最終候補の9作品に選ばれた。惜しくも受賞には届かなかったが、「風景が浮かぶ繊細な筆致と世界観の美しさ」が評価され、編集部から出版の声がかかったという。

祈りと葬送をテーマにした「死者殺しのメメント・モリア」は、永遠の命を手に入れた少女と契約者の死神があらゆる時代、場所を巡り、後悔や未練などからその地にとどまり続けている死者の魂を弔っていく物語。

「死は等しく青かった」の一文から始まる同作は、青を基調とし、豊かな言葉選びで風景や登場人物の内面を色鮮やかに描写しており、夢見里さんは、「風光明媚な八ヶ岳南麓で生まれ育ったことがこの文章につながっていると思う」と話す。

また、死者の魂や残された人々との交流のなかで描かれていく死生観は、「八ヶ岳周辺の考古学で学んだ、縄文人の再生と循環の死生観に影響を受けている」といい、「この地での暮らしが生んだ作品を地元の人に読んでもらえたらうれしい」と話している。

文庫判で304㌻。定価は715円(税込)。市内では、ショッピングセンターきららシティ内の「BOOKS SEIBUNDO」(☎32・8132)などで販売している。