正心館 蓑輪館長が剣道の歩み紹介
「わたしにとって野間道場は剣道の原点であり、ここで育てられたからこそ剣道が好きになった」と書中で記す白州町の道場・正心館の蓑輪勝館長(82)は、2012年〜14年までの2年間、月刊「剣道日本」に「行者(ぎょうじゃ)の記録──40年通った蓑輪勝氏が綴る旧野間道場の凄い剣人たち」を連載した。この内容が10年の時を経て「行者の記録〜未来に伝え残したい剣道修行者たちの哲学」(2420円)として、剣道日本よりこのほど出版された。
「行者の記録」は、四六判の232㌻。冒頭の写真集で野間道場関係者の写真を掲載。第1話から25話までの連載は、蓑輪館長の旧野間道場の記録や記憶を通して戦前・戦後、昭和、平成と心に残る出来事を綴ったもので、連載後10年以上経過していることもあり、内容を見直してまとめたという。
目次では「佐藤卯吉先生は『目指すのは、剣道屋でなく剣道家がいい』と言った」や「望月正房先生は、修業を経て“わざ師”となった」、「後(ご)の先(せん)は、仄(ほの)かな光に似て」など、蓑輪館長が野間道場の一員として道場で出会った望月正房師範や増田真助師範、持田盛二師範などと過ごした出来事を紹介している。
また、目次の「山田洋次時代劇から見た旧野間道場」では、山田洋次監督作品の映画「たそがれ清兵衛」、「隠し剣鬼の爪」、「武士の一分」で、蓑輪館長が剣術指導に携わった時の役者の剣術に対する姿勢や「本当に勝てるの?」という山田監督の問いに対する答えを求めたエピソードを紹介。
さらに、最終話の対談は、「かつて野間道場では──二人が偲ぶ、大家に学んだ修行時代」として、野間道場に通い、「剣道教室」などを執筆した野尻忠克氏と蓑輪館長が、野間道場での当時の出来事を語り合っている。
蓑輪館長は、「私が触れてきた先生たちのことを『行者』と呼んでいる」といい、「大先生はこんな人たちだよというエピソードや『先生に言われたこと』、『見ていて感じたこと』を紹介している」と話す。
また、「小沢丘先生の『この道場のことを伝えるのも仕事だよ』という何気ない一言」によって、メモや資料を残すようになっていたことと、07年に野間道場が閉鎖したことをきっかけに、「連載することを決めた」と話した。