くらし

「名代やきそば」を若者が継承

もちもちの麺がスープに浸かったつゆだくの焼きそば「名代やきそば」でおなじみの長坂町の成駒屋が、3月6日に移転オープンし、新たなスタートを切った。店の跡継ぎが見つからず、昨年夏ごろから閉店を考えていたという成駒屋。同町で生まれ育った伊藤享さん(30)が、「地域住民に長年親しまれてきた大切な味を守りたい」と新しい店長に就任し、伝統の味を引き継ごうと日々奮闘している。

成駒屋の創業は昭和33年。つゆだくの焼きそば「名代やきそば」は、ここでしか食べられない地元の名物として地域住民に親しまれ、約10年前にテレビ番組で紹介されて以降は、全国的にも有名になった。

長坂町出身の伊藤さんも小さい頃から両親に連れられて成駒屋の名代やきそばを食べて育った。地元の高校を卒業後、甲府市内の宝石・美術専門学校に通い、貴金属会社に就職してからも友人や知人を連れて何度も訪れていたという。

成駒屋の60代店主が、後継者不在で閉店を考え始めたのは昨年の夏ごろ。北杜市商工会などに相談するなか、市内でスポーツ施設や飲食店などを経営する地元事業者が成駒屋の運営継続に名乗りを上げた。

同事業者から後継者となる若い人材を探していると相談を受けた伊藤さんは、「慣れ親しんだ味がなくなるのは悲しい。思い出が詰まった名代やきそばを自分の手で大切に引き継いでいきたい」と一念発起し、伝統のバトンを受け取った。

長年の味を守るため、全ての厨房器具をそのまま新店舗に移設して、3月6日に再オープンした。60代店主と2人で店を切り盛りし、接客や調理のサポート、仕込み作業に勤しみながら、名代やきそばをつくる練習は毎日欠かさない。

「つゆだくが好きで、何度も食べたくなる味。豚肉やキャベツなど具材はシンプルだが、麺に合うよう手間ひまかけて仕込みが行われている。昔から愛されてきた味を変えることなく、大切に引き継いでいきたい」。

今後は、料理や地酒のメニューを増やす計画で、伊藤さんは、「一人でも家族連れでも気軽に来てもらえる店にしていきたい。小さいときから食べ親しんでもらい、大人になっても食べたいと思う古里の味になれたらうれしい」と意気込んでいる。

移転先は、長坂総合支所前の交差点を南に50㍍ほど進んだ場所で、当面は水曜、木曜が定休日。問い合わせはTEL32・2459まで。