宇宙遊泳の米とホップ 栽培へ
「東北復興宇宙ミッション2021」の一環で、地上から約400㌔の上空を周回する国際宇宙ステーション(ISS)に、約1カ月間保管されていた「農林48号」の種と北杜市産ホップ「かいこがね」の苗が無事に地上に帰還し、9月27日、市立甲陵高等学校で帰還式が行われた。
同宇宙ミッションは、東日本大震災の発生から10年後の2021年に宇宙から広く復興支援の感謝の気持ちを伝えようと、宮城、岩手、福島の3県を中心に全国約50の自治体が参加した事業で、一般財団法人ワンアースが企画。
今年3月、ISSの日本実験棟「きぼう」に滞在していたJAXAの野口聡一宇宙飛行士に被災地からのメッセージを読み上げてもらい、その動画を全世界へ発信。地域の活性化や震災の伝承につながる同事業の記念品をつくろうと、参加自治体から集めた花や野菜の種も6月に宇宙に打ち上げていた。
北杜市はワンアースと協力して、2008年に宇宙に打ち上げられた山高神代桜の種から育てた宇宙桜の苗木を、被災地に復興支援として寄贈する活動を続けている縁から同事業に参加しており、野口宇宙飛行士がメッセージを読み上げる際に設置された横断幕の製作に甲陵高校の生徒が携わったことから帰還式が同校で行われた。
同日は、甲陵高校の生徒約240人が見守るなか、ワンアースの長谷川洋一代表理事が上村英司市長に宇宙を遊泳した「農林48号」の種を手渡し、上村市長は、「過酷な状況を経て帰ってきてくれた種を北杜市の新たな特産品として育てていきたい」と語った。
また、横断幕の製作などに参加した甲陵高校の荒谷そのみさん(18)は、「この種にどういう願いが込められているのか、多くの人に知ってもらいたい」と話した。
市の企画課によると、昨年の9月に市内の児童に宇宙に送る特産品のアイデアを募ったところ、米という意見が最も多かったことから、県農業技術センターの協力を得て、「農林48号」の原種140粒を用意。
また、かつては一大産地として盛んに行われていたホップ栽培を復活させようと、北杜市発祥のホップ「かいこがね」の苗2本も用意し、6月4日に宇宙に打ち上げられ、7月10日に地上に帰還していた。
米の種は、来年の春に発芽させて育苗し、米づくりを進める予定で、ホップの苗はすでに市内のホップ農家が発芽を目指して栽培に取り組んでいる。